就職活動、転職活動中のデザイナーやデザイナー志望の人たち向けの記事です。
制作会社と事業会社、それぞれの良いところを挙げています。転職活動などの際の、自身の振り返りと適正を見極める参考になれば幸いです。
制作会社と自社サービス系の会社、転職するならどっち?
就職・転職を考えるデザイナーが一度は悩むポイントではないでしょうか。
どちらがいい!と一方的に決めるのは難しいです。同じ「デザイン」という業種でも、制作会社と事業会社ではその業務量や内容が全然違います。また、抱える案件によって必要になるスキルやキャリアプランも全然違います。
自身のやりたいことと、会社でできること、後のキャリアプランをしっかり考えてから就職しないと、ミスマッチでの就職は会社と自分、双方の不利益になります。
デザイナーとしてのキャリアを積み重ねるにあたり、どちらの業種にも良い部分と足りない部分はあります。
ちなみに、私自身は「紙とWebの案件を受託している制作会社」と「ECを中心とした自社サービスの事業会社」の異なる2社でデザイナーとして働いてきました。ちなみにその際の転職活動に使用したのは「Find job」というデザイン系の職種に強い転職支援サイトです。他にも利用しました。ページの最後に紹介していますので参考にしてもらえればと思います。
制作会社・事業会社の良いところ、悪いところ
人によって目指すものが違えば得るべきモノも違いますから、一概に「メリット・デメリット」という表現は正しくないと思います。あくまで分かり易くするために、対になる概念を照らし合わせたものと解釈してもらえると幸いです。
制作会社で働くメリット
- 多種多様なデザイン案件をこなすことでデザインの引き出しが増える
- デザイン制作における料金相場であったり単価の感覚が身につく
- 社内環境がデザイナー向けに最適化されている
- 同じ興味を持った仲間や違った感性を持つ仲間からの刺激がある
事業会社で働くメリット
- 職種が違う専門家と一緒に仕事ができるので知識や興味が広がる
- エンドユーザーの反応をダイレクトに実感できる
- サービス全体の構造や流れを知ることができる
- 残業や休日出勤は比較的少なめ
制作会社で働くデメリット
- 残業や休日出勤が多い
- クライアントの方を向いて仕事をしなければならないことがある
- 与えられる業務が一辺倒になるとスキルが偏ってくる
事業会社で働くデメリット
- 商業デザイナーとしてのスキルは伸びにくい
- デザイン以外の業務も積極的に行う必要がある
- 同じサービスばかりを担当していると飽きることも…
制作会社で得られるスキル・目指すキャリアって?
さらっとですが、それぞれの特長をメリットデメリットで説明しました。もう少し詳しく解説しつつ私感を話していきたいと思います。
デザインの引き出しが増えるのは制作会社
「デザインの引き出し」というと死語のような気もしますが、デザイナーとして、さまざまなテイストのデザインが出来るようになるというのは強みです。これは制作会社で働くほうが圧倒的に身につきます。
もちろん抱えるクライアントの種類と多さにもよりますが、事業会社の場合、ひとつのサービスに掛かりきりになるケースが多いですから、できるデザインの幅が広がりにくいです。
制作会社にいたほうが、ゼロから商業サイトを制作する経験値なども貯まります。担当デザイナーが見積の段階から参加することも多いですから、いずれ独立を考えている人にとっては「単価の相場」を見極める力も身につきます。
色々なジャンルのデザインに携わって「引き出し」を増やしたい人は制作会社のほうがおすすめです。
手(制作スピード)が速くなるのは制作会社
なにを持って手の速いデザイナーとするのかという話もありますが、商業デザインを作り上げるための思考やデザインセンス、オペレーションスキルは制作会社にいるほうが伸びます。
事業会社は中長期に渡ってサービスの改善がメインの業務になりがちなので、それはそれでユーザー視点のサイトづくりのスキルは養うことができます。
が、いかに「シビアな納期の中で速く成果物をあげるか」というための技術や時短ワザは、やはり制作会社で先輩について修行するほうが早く身につくでしょう。制作会社にいる凄いデザイナーって本当にすごいですから。
手の速さは即戦力であり武器になります。
同じ興味や違った感性から刺激を受けるのは制作会社
事業会社もチームを組んでデザインをするケースもありますが、デザイナー以外の職種の人間のほうが多いのが普通です。一方で、制作会社の場合は回りを見渡すとデザイナーのほうが多い環境です。
デザインに関する話題や知識を共有できる仲間が毎日そばにいるというのは有益です。アンテナを張ってなかったところから情報が入ってきたり、その逆もしかり。またデザイナーの友人ってこれまたデザイナーだったりするので、仲間を通じて横の繋がりが広がったり、そこからユニットを組んだりしてプライベート制作しているデザイナーなんかも多いですよね。
社内環境がデザイナーに最適化されている
個人的には環境って結構重要だと思っています。制作会社の場合その社内環境がデザイナーのために最適化されています。
デザイン雑誌や各種名鑑、資料が充実していたり。デザイン系の資料って自分で買おうと思うと決して安くはないです。そういったが日頃からタダで読めるのはありがたいですね。どうしても手元に置いておきたいものだけ買うということもできますので。
事業会社はさきほども言ったとおり、デザイナー以外の人間のほうが多いです。ですから、全体に配分される予算やスペースの都合も考えると制作会社のような環境は整いにくいんじゃないでしょうか。
デザイナーが社内で1番お金のかかる連中ですから。各フォントのライセンスやAdobeソフト・それが動作するスペックのPC etc…。
最近では、回りに自慢したくなるようなおしゃれなオフィスだったり、クリエイターが喜びそうな設備や資料を完備している事業会社も特にWebサービスを展開している所だと多くなってきましたが。
一方で…。残業が多いのは制作会社
制作会社で働いていてツラいところはこれに尽きるんではないでしょうか。
基本的に受託制作はクライアントありきですから、夕方にあったバック(修正などの返答)を翌日までに対応しなければいけないということもあります。緊急案件の場合は夜通しで作業することも少なくありません。
事業会社に比べて残業が多い傾向にあるのは間違いないです。
え?残業代?ばかやろう。
制作会社はほとんどが「裁量労働制」を導入しています。必ずしも「かけた時間=成果」にはならないので。その代わりにみなし残業と言って、分かり易く言うと予め一定時間分の残業代のようなものが給与に加算されていることが多いです。みなし残業。あーあー嫌な言葉。
「残業 No thank you」な人間は絶対に制作会社はやめておいたほうがいいです。
クライアントのための制作になりがち
これは制作会社によくあるんですが、ゴールが「成果物の納品」という性質上、ユーザーのことを考えるのではなく「クライアントが良しというものを作ればいい」という思考になりがちです。
クライアントは基本的にデザインに関しては知識も技術もないですから、人によっては「好み」で修正が飛んでくることもあります。
自分の場合、道がズレ始めたなと思ったらその都度修正するようにきちんと話し合いますが、やはり納期が迫ってくると「もう言う通りにしたほうが早く終る」という思考になってしまい、よくわからない物が出来上がるという結末になることも。
納品がゴールではなく、納品が成果をあげることがゴールであることを忘れないようにしなければいけません。
では、事業会社の良いところって?
では、事業会社でデザイナーをするメリットや至らない部分ってどういった所なのか、詳しく見ていきましょう。
職種が違う専門家と仕事ができる
ひとつのサービスを作り上げるには、とても多くの知識と専門家の腕が必要です。
Webサービスを運営するなら、デザイナー・エンジニアはもちろん、企画できる人間やライター、他にもSEOやWebプロモーションに特化した人間も必要です。
ECサイト(通販サイト)などでは、商品を選定・仕入するバイヤーも必須です。カスタマーサービスを内製している会社ではカスタマー担当もいますし、梱包・出荷をするロジスタッフもとても重要な役回りです。
そういったデザイナー職以外の人たちから学べることって実は多い。
デザイナーだけで働いているだけでは気付けない視点から意見が上がってきたりします。それがデザイナーとしての見識を広げるキッカケにもなりますし、異なる知識をもった専門家たちと一緒に仕事するのは楽しいです。
事業やサービスを回すことができるデザイナーとして成長できる機会が存在します。
サービスの流れや裏側が見れるのは事業会社
事業会社に勤める1番のメリットですね。デスクチェアをくるりと回して社内を見渡せばすぐにサービスの裏側が覗けます。
逆に言うと、そういった社内やサービスの状況を適切に判断しながらデザインしていかないといけません。たとえどれだけカッコイイデザインや綺麗なサイトをつくる技術を持っていても、戦況を見極めることができないデザイナーでは戦力になりません。
さらにいうと、自身の分野外の領域にも首を突っ込んでいくようなデザイナーのほうが重宝されます。
例えば「俺、デザイナーだから」とデスクで天狗になっているようなタイプは、事業会社のデザイナーには向かないです。
将来的に自分でサービスを立ち上げたいなど考えている人は事業会社でこういった全員の流れとマネタイズの方法を学ぶ必要がありますし学べます。
ユーザーからの反応に「気づき」があるのは事業会社
制作会社の場合、納品した成果物に対してのリアクションや、具体的な数値・成果などがクライアントのほうから改めて降りてくることってあまりないです。
評判が悪ければクライアントが去ってお仕事が一つ消えるだけ。
事業会社の場合は自社発信のサービスですから、提供しているものすべてがお客様に直に届きます。その良し悪しもダイレクトで返ってきます。ときにはエンドユーザーから「ありがとう」と感謝されることも。
ですので、使ってくれる人のことを考えながら業務に取り組むことになります。また売上にコミットすることが求められますから、より数字を意識できるデザイナーでいることが求められます。
これは責任持って仕事している人間なら自然と意識できることですが…。もちろん数字だけに囚われるのもNGです。
エンドユーザーの顔が見えるというのは「やりがい」に繋がります。
残業が少ないのは事業会社(制作会社比)
制作会社に比べれば残業や休日出勤は少ないです。(スタートアップのサービスだと例外もありますが)
デザイナーよりも、むしろ上流のマネージャーや企画のほうが仕事に追われていることが多いんじゃないでしょうか。
まぁ、制作会社にありがちな定時5分前にクライアントから舞い込む「明日の朝に確認したいです^^(だから徹夜してでもあげろやボケカス)」みたいな #制作会社あるある の無茶振りはあまり起こりません。と言っても自分がいた制作会社ではそんな事ほとんどなかったですが。
事業会社のデザイナーの場合、時間的に余裕ができるとプライベートでの制作や学習に時間を充てているデザイナーも多いです。
セミナーなどに積極的に参加して人脈づくりをする人もいますね。
事業会社には「THE デザイナー」は必要ない
事業会社ではデザイナーがデザインだけしていても役には立ちません。「俺はデザインだけしてたいんや」という人には事業会社は向かないですね。
デザイン以外の業務も多く存在するのが事業会社
悪い部分か否か意見は分かれますが、デザイナーがデザインだけやっていられるなんて思うなよ?ってわけです。
むしろデザインなんてオマケです(暴論)
サービス運用で売上を立てるにはデザイン以外にも大切なことがたくさんあります。
また、業務すべてに専門のスタッフが割り当てられるわけでもないので、自身の専門外の事も積極的にできる人が求められます。
それだけ幅広い知識が求められるので「何事も勉強だ!」な人間には向いていますが、デザインだけやりたい人には向いていないと思います。
自分もECサイトのデザイナーを担当していた時には、デザイン以外にも、写真撮影はもちろん、企画の立案やコンテンツのライティング、繁忙期には出荷梱包や棚卸しなども経験しました。
(たまに)飽きる
言い方が悪いですが、そりゃ、1つのサービスを長期にわたって担当しているとどこかで「もう見飽きたわ」となることもあります。10個のまったく異なるサービスを毎日とっかえで担当しているならともかくですが。
細かなスクラップ・アンド・ビルドを繰り返す日々は、よりユーザー目線のサイトを構築するスキルは身につきますが、そういった試行錯誤をうまく楽しみながら貢献できるデザイナーでいることが大切です。
なのでプライベートでは、日々の業務とは違った感覚を養うための個人制作に精を出して、センスやスキルを磨くことも大切ですね。
ただ「デザイナーになりたい」で就職したら失敗する
自分の場合は制作会社でも事業会社でも楽しみながら働けたと思います。
制作会社での、プレッシャーのかかる納期と両手から溢れるほどの案件を胃をキリキリさせながら処理していくのも良い経験になりました。(めちょツライけど)
事業会社での、日に何万もPVのあるサイトのコンバージョン率(成約率)を0.1%でも向上させるための細かな施策を繰り返す日々やユーザーからの思いもしない反応が見られるといった経験も非常に勉強になりました。
制作会社に向いている人
- 将来的にデザイン事務所を立ち上げて独立したい人
- 色々なデザインを幅広く制作してみたい人
- とにかく作るのが好きな人
事業会社に向いている人
- 自分でサービスをつくって運用したい人
- ユーザーと対話をするようなデザインにやりがいを感じる人
- プライベートも充実させたいから残業三昧はちょっと…という人
こんな感じでしょうか。
自身の適性や好みがあると思いますから、
ただ「デザイナーになりたい!」だけでは失敗します。
しっかりと考えて就職転職活動はしましょう。
自分にあった会社を探すための転職支援サービス
もし、今現在就職活動や転職活動をしているのであれば、制作会社も事業会社も幅広く掲載されている転職サイトが鉄板です。いくつかお勧めを紹介しておきます。
転職支援サイトで探す
自分はこのサイトで転職活動を成功させました。グラフィックデザイナー、Webデザイナーなど幅広く取り扱っているので転職活動中は常にチェックしていました。
Find jobのサイトはこちら
ほかにもあります。こちらもおすすめ。
【IT/WEB・ゲーム領域】完全特化の転職
制作会社名鑑から探す
本屋に行くとあります。分厚い「制作会社名鑑」というものが売っています。
これには制作実績が必ず掲載されているので、自分が作りたいと思っている媒体やジャンルのデザインをしている会社に自らアタックするのも手です。
自分は転職活動中に1社、この方法で応募して内定を貰ったことがあります。最終的に他社との条件面などの比較で辞退することなったのですが、こういった方法で応募してくる人間は少ないからか競争率は低くおすすめです。
以上です。長くなりましたが参考になれば幸いです。